『刑事モース』「月の裏庭」

2020年5月16日公開

2022年2月16日最終更新

 1967年を舞台とした『刑事モース ~オックスフォード事件簿~(Endeavour)』第3シリーズ第2話「遠き理想郷(Arcadia)」(2016)ではサーズデイ警部補の息子サムがケロッグの中のサンダーバード2号を探しているシーンがあったが、1969年が舞台の第6シリーズ第2話「月の裏庭(Apollo)」(2019)ではついにそのスタジオが登場した。架空のヘビサイド・スタジオでスレイトン兄妹はSF人形劇を製作、番組名は「ムーン・レンジャーズ(Moon Rangers)」。

 実際の撮影はCentury 21 Filmsが担当し、もちろんスーパーマリオネーションで製作されていた。一見するとこのSF番組の存在だけがアンダーソン作品を意識しているようだが、その他にも仄めかしが多く見られた。ここでは私が気がついた点を登場順に紹介する。

※『刑事モース』としてのエピソードガイドはSuzyさんのブログ「LOVE 「刑事モース」 ENDEAVOUR and ショーン・エヴァンス (Shaun Evans)」の当該記事を御覧ください。

  • ドレイク教授が車で流した曲(ITV版)→Led Zeppelin “Whole Lotta Love

『プロテクター電光石火』第1話「標的はフィアンセ」でキャロラインがこの曲に合わせて踊る。

   ※海外配給版では他の曲に差し替えられている。
   ※おそらく偶然。

  • 試写で観ている車の事故の映像→『キャプテン・スカーレット』第6話「タイムを追え!」

ブラック大尉がマグナム博士を追跡し襲うシーン。

   ※タイヤがパンクしてふらついているシーンは左右反転させている。

  • ヘヴィサイド・スタジオの外観
    ​→ スラウ(イプスウィッチ・ロード)にあったAP Filmsの外観に似ている建物をロケで使用。

  • バーバラ→バーバラ・ベイン

『スペース1999』で医者のヘレナ・ラッセル博士を演じている。

  • クレイター大佐の人形

『サンダーバード』50周年企画の一本「The Stately Home Robberies」のドーキンズとして作られた人形。​​

  • レントン少佐の声(Justin T Lee)
    → 『サンダーバード』のスコット・トレイシーの声を担当したShane Rimmerに似せている。
    上記企画の「The Stately Home Robberies」のスコットの声の一部も彼が担当している(ゴードンに配線の指示をする場面)。

  • ルナの人形を作った人→メアリー・ターナー。

もともとHalifaxのCM用に製作されたものを流用→参考記事

  • 「ルナが話せれば」→『スティングレイ』のマリーナも同様に話すことができない。

  • ​ボタンを押す手は『刑事モース』シリーズの脚本家ラッセル・ルイス氏の手→参考記事

  • 月面の地図→『スペース1999』のムーンベース・アルファがある。

  • クリスティーン・チェイス
    → 名前がクリスティーンのスタッフは人形師のクリスティーン・グランヴィルと声優のクリスティーン・フィン。
    ​  ジェリー・アンダーソンの秘書の名前はなにかの文献に書いてあったが、見つからず……orz 追記予定。

  • ジェフ・スレイトン→ジェフ・トレイシー

『サンダーバード』の国際救助隊の隊長であり五兄弟の父親の名。

  • ステーションX19(エックス・ワン・ナイン)→X20

『スティングレイ』でタイタニカ王国のタイタンが地上に差し向けているスパイの一人。

※吹替版では「エックスにじゅう」と読んでいるが、原語では「エックス・トゥー・ゼロ」と読んでいる。

  • ジェフの事務所内の小物。

「The Stately Home Robberies」のチャールズ卿、クレイトンワード邸、TB5のテープレコーダー等。荷台の大きな長めのトラックは『サンダーバード』第12話のゴミ収集車、第27話のパルプ回収車などを彷彿させるデザイン。

 

  • ジェフやエリックが最初に携わったテレビ人形劇『Bendy the Banana Boy』

ジェリー・アンダーソンのテレビ人形劇二作目は『Torchy the Battery Boy』。

※ジェフとヒルディの兄妹は舞台で人形劇を行っていたと言っているが、ジェリー・アンダーソンの原点は異なる。

 

  • スタジオ内で話すモース巡査部長とサーズデイ警部補の背後にぶら下がっている人形

クレイター大佐・レントン少佐・ペネロープ・変装したフッド?・X1。

※舞台裏映像を見るとこれらの人形は冒頭のロケット爆発シーンの脇にもぶら下がっている。

 

  • 人間が銃を撃つ映像を人形劇の間に挟む

当時も実際に人間のショットを挟み込んでいる

※『サンダーバード』第25話「情報員MI.5」でカールがブラッカーを撃つシーンなど。

  • 「ディンキーとの契約」→当時おもちゃを発売していたディンキー・トイか?

  • 無人の暗いスタジオでぶら下がっている人形三体
    → 手前からチャールズ(TB65)・ペネロープ or ルナ・ジェフ?

 

  • アポロの月面着陸

実際にCentury 21 Organisationがアポロの月面着陸時に製作していたのは『謎の円盤UFO』の「ムーンベース応答せず!」。

※ ヘヴィサイド・スタジオの場所は不明だが、『サンダーバード』の撮影を行ったスタジオはスラウのスターリング・ロードに位置し、スラウはモースらが所属するテムズ・ヴァレー警察の管轄下である→参考(Thames Valley Police Local Policing Areas)​​

​​舞台裏の映像

監督:アクション!

レントン少佐万が一ルナが話せたら、バーバラに何があったか教えてくれるかもしれない。

エヴァンズ:そう、人形劇です。可能な限り本物にしたかったのです。

レントン少佐万が一、小惑星からビームを発信できたら――。

リグビー:僕は『スティングレイ』や『サンダーバード』を観て育ちました。人形やセット、小さな衣装、その手のものを見て、素敵なものだと感じました。

エヴァンズ:この撮影をやると知った時、ネットで調べたら、スティーブンを見つけました。

監督:いいか?

スタッフ:いいぞ。

エヴァンズ:彼はスーパーマリオネーションに信じられないほど情熱的で、人形のことや撮影方法など様々なことを助言してくれました。

ラリビエー:みんな!

ラリビエー:実際には複雑な過程を経ています。なぜなら、現実世界でとても素早く起きることを撮影するので、ハイ・スピードで撮影する必要があります。

監督:カット!

ラリビエー:運が良かったことに、撮影モデルが散らばった時、破片の一つがカメラに向かって飛び――

監督:アクション!

ラリビエー:――実際にレンズそのものに当たったのです。

監督:カット!

ラリビエー:架空の番組『ムーン・レンジャーズ』を作るよう頼まれ、「月の裏庭」ではこれを製作しています。

ジェフ・ステイトンドレイク教授のためにもう一回。

ラリビエー:ジェリー&シルビア・アンダーソン夫妻の製作会社は『スティングレイ』、『サンダーバード』、『キャプテン・スカーレット』を作っていました。この『ムーン・レンジャーズ』のスタジオもそれに似ています。三年前に僕たちは『サンダーバード』の新作三本を五十周年記念で制作し、その時1960年代と全く同じ方法で製作を行いました。

クレイター大佐しかし彼女は有名な天体物理学者だ。

ラリビエー:『サンダーバード』との関係を保つために、パーカー役のデイヴィッド・グレアムをクレイター大佐に起用しました。

クレイター大佐そのワイヤーとライトの箱は何と言っている?

ラリビエー:彼は今93歳です。

レントン少佐万が一ルナが話せたら――

ラリビエー:ルナの人形は1960年代にペネロープの人形を彫った女性が製作しました。また監督にも当時のスタッフを呼び、助言を求めました。1950年代に撮影を始めると、彼らは人間の手を使うか、人間を前景に人形を背景に置くことを思いつきました。

クレイター大佐すごいぞ!

ラリビエー:人形師役の俳優を訓練させる必要もありました。

エリック・ギッドビーすまない、みんな。釣り糸が絡まった。

ジェフ・スレイトンカット。

カニンガム:『ムーン・レンジャーズ』のキャラクターはコリンがモデルになっています。

ラリビエー:いくつかのスケッチを見せてもらった時、彼が「この人形はもしかしたらコリン・デクスターの追悼になるかも」と言いました。

エヴァンズ:冗談でしたが良い考えで気に入りました。実際に彼に会ったことがありますが、彼はきっと面白いと思うでしょう。

クレイター大佐もしかしたら上手くいくぞ。

エリック・ギッドビーどうした、気をつけて。

ジェフ・スレイトン二人ともどうしたんだ?

エリック・ギッドビー簡単に思うか?

エヴァンズ:この小さな人形がセットに立ち、そして僕たちもセットに立つ。こうしてなにか大きな、人類が行くのは、御存知の通り、宇宙です。そこには何かこう、僕が…本当に、はっきりと言えないけど…何か本当に素晴らしいものがあったと思います。

翻訳に関してSuzy🌻スージー様よりご教示いただきました。ありがとうございました。

これまでのあらすじ

第5シリーズ第1話(通算第18話)から第6シリーズ第1話(通算第24話)までのネタバレが含まれています。

 テムズ・バレー警察カウリー署のエンデヴァー・モース刑事巡査部長はレジナルド・ブライト警視正、フレッド・サーズデイ警部らの下、ジム・ストレンジ刑事巡査部長やジョージ・ファンシー刑事巡査と様々な事件の捜査に当たっていた。1968年頃からギャングのエディ・ネロの縄張りに対するクロムウェル・エイムスらによる事件が相次ぎ、ギャング同士の抗争に発展するのではないかと警察は警戒を強めていた。警察署の統廃合によりカウリー署の閉鎖が決まるが、閉鎖の直前にエイムスが手下を引き連れてネロのスヌーカー場を訪れる。薬物を巡って争い結果双方とも死んでしまうが、エイムスを見張っていたファンシー刑事巡査も殉職する。しかし検死解剖によってファンシー巡査を撃った犯人は別にいることがわかり、カウリー署の刑事たちは真犯人発見を誓い別れた。
 カウリー署の閉鎖後、新しいキャッスルゲート署へ転属そして降格されたサーズデイ警部補はロニー・ボックス警部の下再び刑事課で、ブライト警視正は交通部で、バンベリー署へ異動したストレンジ刑事巡査部長は部門間将来計画運営委員会の一員として日々を過ごしていた。ブライト警視正は信号機つき横断歩道(Pedestrian Light-Controlled Crossing:ペリカン歩道)の利用促進のテレビCMに出演するが、ボックス警部らにそれで茶化されていた。ウッドストック署の駐在所勤務が続く制服警官となったモース巡査部長が見つけた少女の遺体に関する捜査が続く中、近くの教会に出入りしていたホームレスの若い男性が薬物の過剰摂取で死亡する事件も発生する。ストレンジ刑事巡査部長はこの件がファンシーの一件となにか関係があると睨み記録をとる。やがてモースはストレンジのおかげでキャッスルゲート署の刑事課へ転属となる。そんな中でも内務省の病理医マックス・デブリンはいつも通り検死に、オックスフォード・メール紙の女性記者ドロシア・フラジルは取材にやってくる。
 サーズデイ警部補の妻ウィンは出勤する夫に毎日サンドイッチを作っていたが、夫フレッドがその弟チャーリーに老後の資金を無断で貸したこと、そして弟が事業に失敗したことを知り、夫に対して失望してしまう。二人の娘ジョアンは紆余曲折を経て一人立をし、今では福祉部のヴィヴ・ウォールの下で見習いとして働いている。

日本語版スタッフ

エンデヴァー・モース(Shaun Evans):矢野 正明
フレッド・サーズデイ(Roger Allam):土師 孝也
レジナルド・ブライト(Anton Lesser):佐々木 陸
ジム・ストレンジ(Sean Rigby):丸山 壮史
マックス・デブリン(James Bradshaw):魚 建
ロニー・ボックス(Simon Harrison):赤坂 柾之
アラン・ジャーゴ(Richard Riddell):梶川 翔平
ウィン・サーズデイ(Caroline O’Neill):藤生 聖子
ジョアン・サーズデイ(Sara Vickers):長尾 明希
ドロシア・フラジル(Abigail Thaw):定岡 小百合

ヴィヴ・ウォール(Alison Newman):定岡 小百合


アダム・ドレイク教授(Ben Wainwright)
エリオット・ヴィンクヴィスト博士(Oliver Chris):裕 樹
ナタリー・ヴィンクヴィスト(Alice Orr-Ewing):米倉 希代子
ミセス・トレリス(Charlotte Bradley):定岡 小百合
ラリー・ハンボルト博士(Sargon Yelda)
イソベル・ハンボルト(Sophie WInkleman):竹村 知美?
フローラ・ハンボルト(Sasha Willoughby)
マシュー・ハンボルト(Gabriel Payne)

ジェフ・スレイトン(Matthew Cottle):菊池 康弘

ヒルデガード・“ヒルディ”・スレイトン(Mary Stockley):田村 千恵

クリスティーン・チェイス(Katie Faye)
エリック・ギッドビー(Robert Hands)
マリリン・ギッドビー(Terenia Edwards):秋田 奈帆子(Twitterより)


ガブリエル・ヴァン・ホーン(Blake RItson):上住谷 崇?

ハーモニー(???):長尾 明希?
マック・ハニドー(Ross Boatman):菊池 康弘?

​モースに苦情を言う男性(???)

TVアナウンサー(Michael Parkhouse)
ラジオアナウンサー(???)
強盗(???)
強盗(???)
ニール・アームストロング(self)
ウォルター・クロンキット(self)

〈ムーン・レンジャーズ〉

ロック・レントン少佐(Justin T. Lee):赤坂 柾之?
クレイター大佐(David Graham):宮本 誉之?
人形師(Stephen La Rivière)〔ブリッジのスーツにチョッキを着た男性〕
人形師(Elliot Pavelin)〔ブリッジのもうひとりの男性〕
撮影スタッフ(Géraldine Donaldson)〔セットで人形の足を押さえている〕
撮影スタッフ(Andrew T. Smith)

〈その他声の出演〉

上住谷 崇
菊池 康弘
田村 千恵
裕 樹
米倉 希代子
宮本 誉之
竹村 知美
佐藤 友啓
高橋 沙耶香

秋田 奈帆子

〈日本語版製作〉

翻訳:高橋 剛

演出:前田 美由紀

調整:日々野 祥規

録音:Planet Movie Sound Room

制作担当:村田 成広

制作:WOWOWエンタテインメント

WOWOW担当:佐藤 美穂

​日本語字幕:浜本 裕樹

放映日

​英 国初放送:2019年2月17日(日)20時00分~22時00分 ITV 1

​​米 国初放送:2019年6月23日(日)20時00分~21時30分 PBS

吹替版初放送:2020年2月24日(月)14時05分~15時40分 WOWOW Prime
字幕版初放送:2022年2月15日(火)13時00分~15時00分 WOWOW Plus
NHK未放送